イントロダクション

Max とは?

”Max とは、普通のシーケンサーやヴォイシング・プログラムに限界を感じた人たちのための、グラフィカルな音楽プログラミング環境です”

ミラー・パケット(Miller Puckette, Max reference manual, 1988)

Max は1986年暮れから、パリにある Institut de Rechrche et de Coordination Acoustique/Musique (IRCAM) において開発されました。オリジナルの開発者はミラー・パケット(Miller Puckette)です。Max は、パケットとデヴィッド・ジッカレリ(David Zicarelli)によってさらに開発が進められ、1991 年にOpcode System 社から商用プロダクトとして販売されるようになりました。2000 年にはCycling’74 が Max の発売元となりました。それ以来、Max は拡張され、オーディオデータ(MSPの導入によって可能)やイメージ/マトリックスデータ(Jitter の導入によって可能)の処理を含むようになりました。

Max では、やってみたいと思うどんな方法によってでも機器をコントロールすることができます。作曲・メディア構成、即興的な処理、メディアの順序づけや修飾を加える処理など、あなたがコンピュータを使った処理をイメージできることであれば、どんなことでも、それを実行するアプリケーションを作ることができます。Max は全てのコントロール情報を単なる数値のストリームに変えることができるため、あらゆるものをあらゆるものに「繋ぐ」ことが可能です。

Max は、高レベルで、グラフィカルなプログラミング言語環境を提供します。プログラムはテキストではなく、グラフィカルなオブジェクトを使って「書かれ」ます。これによって、多くの難解なコマンドや構文を学ぶ必要性が減じられ、単にオブジェクトどうしを接続することによってプログラムを書くという、解りやすく、直観的な方法を提供してくれます。

Max は、あなたのために全ての低レベルのプログラミング作業を管理してくれます。これは、任意の時間にイベントのトリガを行なったり、MIDI や 他のコミュニケーション用プロトコルのインターフェイスとなったり、有用な論理的な演算を行なったりしてくれることでしょう。

Max によって作成されたアプリケーションはリアルタイムで実行することができます。Maxは十分な速さを備えているため、あなたの演奏に基づいて即座に音楽を生成したり、あなたの演奏と同時にそのパフォーマンスを修正するようなプログラムを書くことを可能にします。

Max は C 言語をベースとしています。Max はシンプルでかつ多目的であり、それ自体C言語で記述された高レベルでグラフィカルなプログラム言語ですが、他のプログラミング言語に精通している人々にも、プログラム経験が全くない人々にも容易に使うことができます。しかし、C 言語に堪能な人々ならば、Max は自作の C コードと結びつけることができます。そのため、(Max のできることは数多くありますが)Max ができないことで、あなたが行なわなければならないことがあれば、あなた自身のための Max オブジェクトを C 言語で書くことができます。Max 4.5 以降のリリースでは、Java や Javascript のサポートにより、Max の可能性はより拡張されています。

マニュアルの使用法

Max のユーザマニュアルは4巻からできています。その内訳は、この巻、Fundamentals(基本) を含め、Fundamentals(基本)、Max チュートリアル、Max トピックス、そして Max リファレンスマニュアルとなっています

この巻(Fundamentals:Max の基本)には、次のような内容が含まれます。

  • セットアップ(Setup)- 最初にこのセクションを読んで下さい。
    Max をうまく使うために必要な機器やシステムソフトウェア、 MIDI 機器の接続の方法、Maxアプリケーションをインストールする方法やテクニカル・サポートを受ける方法について述べています。

  • 概説(Overview) - これまでにMax を使ったことがない場合、次にこのセクションを読んで下さい
    Max アプリケーションについての記述、このマニュアルを通じて使用される基本的な用語の紹介、そして、オンラインヘルプの使い方について述べています。

  • Maxの諸要素(Elements of Max)
    メニューコマンド、キーボード・ショートカット、Max オブジェクトについての情報があります。

  • Max と MIDI
    MIDIソフトウェアのプロトコル、 MIDIの送受信、CoreMIDI(Macintosh) 或いは、MME(Windows) 環境でのMax の使用に関する情報があります。

Max チュートリアルは、段階的なコースを通して、Max でプログラムを組む方法を身につけられるようになっています。Max Tutorial フォルダには、Max によって書かれた有益なプログラムがあり、それぞれのチュートリアルに対応しています。

Max トピックスには、データ構造、ループ、カプセル化、デバッグ、グラフィック、スタンドアローンアプリケーションのメイク、等のプログラミングに関する問題についての議論や、特にこれらの問題がMax でどのように取り扱われるかについての説明があります。

Max リファレンスマニュアルは、特定の Max オブジェクトに関する詳細な情報が必要な場合に参照すべきものです。

  • Max Objects
    Max によって提供されるビルトイン、及びエクスターナルオブジェクトのそれぞれの動作に関する正確な技術情報が含まれています。オブジェクトはアルファベット順に並べられています。

  • Max Object Thesaurus
    Max オブジェクトの逆引きインデックスです。これは、オブジェクト名ではなく、キーワードがアルファベ ット順に並べられています。あなたが達成しようとしているタスクにとってどのオブジェクトが適当かを知 りたいときにこのシソーラスを使い、その後、それらのオブジェクトを、オブジェクト名によってオブジェクトセクションで調べます。

「Max におけるJavascript(Javascript in Max)」というドキュメントでは、Javascript 言語のサポートに関して述べていて、Max チュートリアルの Javascript に関する2つの章を補うことを意図しています。

Max ディストリビューションには、さらに、Max の開発に Java を使用するためのチュートリアルとマニュアルのセットが含まれています。Max の拡張のための C 言語によるプログラミングに関心がある場合には、Max/MSP SDK を Cycling'74 の web サイト(www.cycling74.com)からダウンロードして下さい。

あなたが Max の初心者なら、このマニュアルの Setup と Overview セクションから読み始め、その後、幾つかのチュートリアルを試してみること推奨します。 max-help フォルダのヘルプファイルを調べることによっても学ぶことができます。このフォルダは、Winndows では C:\Program Files\Cycoing'74\MaxMSP 4.6\max-help に、Macintosh では /アプリケーション/Max4.6/max-help に置かれています。さらに、Max オブジェクトシソーラス(Max Object thesaurus) や「Max トピックス」マニュアルの解説の章を読んでみることによっても学ぶことができます。

マニュアルの記法

Max の中心となる素材はオブジェクトです。オブジェクトの名前は常にこのように(like this)ボールドフォントで記されています。

メッセージ(オブジェクトと受け渡しされる情報の部分)はこのように(like this)プレーンフォントで記されています。

See Also セクションでレギュラーフォントで記述されたものはこのマニュアル、Max チュートリアル、Max トピックスマニュアル、Max リファレンスマニュアルへの参照です。

Max ユーザのための他のリソース

max-help フォルダにあるヘルプファイルは、個々のMax オブジェクトのインタラクティブな使用例を提供します。

Cycling'74 web サイト(http://www.cycling74.com) では、ソフトウェアの最新のアップデートの他、よくある質問(FAQ)や他のサポート情報の広範囲なリストが提供されます。

Cycling'74 では、インターネットでのメーリングストを運営しています。そこでは、プログラミングに関する質問や、意見交換を行なったり、さらに、他のユーザが共有している新しいオブジェクトやサンプルについて知ることができます。このディスカッションに参加するための情報や、サードパーティ製の Max に関連したリソースの案内は、http://www.cycling74.com/community/ へアクセスして下さい。

最後に、Max を操作する上で何かトラブルが生じた場合、support@cycling74.com に e-mail を送って下さい。そうすれば、私たちはあなたを助けるために努力します。また、概念的な性質(どのようにしたらよいか...?)の問題に関しては、メーリングリストへ投稿されることを推奨します。そうすれば、コミュニティ全体としてアドバイスを提供することができ、その話題がコミュニティ全体にとってもプラスになる可能性があります。