チュートリアル25

プロセッシング:ディレイライン

シグナルのディレイ(遅延)によってもたらされる効果

シグナルをディレイ(遅延)させ、これをオリジナルのシグナルとミキシングすることは、オーディオ処理の中で、最も基本的ですが用途の広い技術のうちの1つです。ディレイタイムは、2、3ミリ秒から数秒までに及ぶことができますが、これはディレイシグナルのストアに利用できるRAMの量にのみ制限されます。

ディレイ・タイムがほぼ2、3ミリ秒のとき、オリジナルとディレイされたシグナルは干渉しあって、離散的なエコーとは違った、微妙なフィルタ効果を作ります。ディレイタイムがおよそ100ミリ秒のとき、"slap back"エコー効果(ディレイされたコピーがオリジナルのすぐ後を追い掛けていく)を聞くことができます。長いディレイタイムの場合、2つのシグナルは分離したイベントとして聞こえます。それは、あたかもディレイされた音が遠くの山に反射しているようです。

このチュートリアルパッチは、ステレオシグナルの各々のチャンネルを独立してディレイさせ、ディレイタイム、及びダイレクトシグナルとディレイシグナルのバランスを調節することができます。

ディレイラインを作る:tapin~とtapout~

MSPオブジェクトtapin~は、継続的にアップデートされるバッファで、常に直前に受信されたシグナルをストアしています。tapin~がストアするシグナルの量は、タイプされた引数で決定されます。例えば、引数を1000とタイプされたtapin~オブジェクトは、インレットで受信されたシグナルのうち直前の1秒をストアします。

直前の500ミリ秒及び1000ミリ秒を利用される1秒間のディレイバッファ

tapin~のアウトレットが接続される唯一のオブジェクトは、tapout~オブジェクトです。この接続は、tapout~オブジェクトをtapin~でストアされるバッファにリンクします。tapout~オブジェクトは、ディレイ・シグナルを、直前の特定のポイントで「利用-"tap out"」します。上の例では、tapout~はtapin~から500ミリ秒前に発生したシグナルを得て、左のアウトレットから出力します。;また、同時に1000ミリ秒ディレイされたシグナルをも得て、右のアウトレットから出力します。tapout~が、tapin~にストアされた長さを超えてディレイさせることができないのは明らかです。

オリジナルとディレイシグナルをミキシングするパッチ

チュートリアルパッチは、コンピューターに入力されるサウンドを2つの場所へ送り出します。:1つは直接コンピューターのアウトプットへ、もう1つはtapin~-tapout~のディレイペアへです。このパッチでは、各々の場所の各々のステレオのチャンネルからどれくらいの音量のシグナルを聞くかをコントロールでき、オリジナルとディレイシグナルを、どんな割合でミックスすることも可能です。

* オーディオをオンにして、コンピューターの音声入力ジャックにサウンドを送って下さい。"Output Level"と記されたナンバーボックスを、ちょうど良いリスニングレベルにセットして下さい。"Left Delay Time"ナンバーボックスを500に、"Right Delay Time"を1000にセットして下さい。

この時点では、各々のチャンネルに対する"Direct Level"が1に、各"Delay Level"が0にセットされているので、ディレイシグナルは全く聞こえません。シグナルはディレイされていますが、単にその振幅が0にスケールされているので聞こえないだけです。

ダイレクトシグナルは最大;ディレイシグナルは0になっています

パッチャーウィンドウの左辺のhsliderは、"Dry"(すべてダイレクト)出力シグナルと"Wet"(すべて処理された)出力シグナルの間のバランスフェーダーとしての役目を果たしています。

*ダイレクトシグナルとディレイシグナルの振幅が両方とも0.5になるように hsliderを中間点にドラッグして下さい。両方のチャンネルでオリジナルのシグナルが聞こえますが、左のチャンネルには0.5秒のディレイシグナル、右のチャンネルには1秒のディレイシグナルがミキシングされています。

ダイレクトシグナルとディレイシグナルは等しいバランスです

*いろいろな異なるディレイタイムの組合せや、wet-dryレベルを試してみることができます。非常に短いディレイタイムで、微妙なコムフィルタの効果を試してみて下さい。2つのディレイタイムを用いて、リズムを作ってみて下さい。(例えば、ディレイタイム375ミリ秒と500ミリ秒)

このパッチは、シグナルの不連続に対する防止対策はされていないので、サウンドを演奏している間にパラメーターを変えると、サウンドの中でクリック音を生じる可能性があります。line~またはnumber~オブジェクトでパラメーター値の間の補間をすることによって、この問題を回避した、このパッチの改良版を作ることができるでしょう。

チュートリアルの先の章では、ディレイフィードバックの作り方、フランジングやピッチエフェクトのための、連続して可変なディレイタイムの使い方、そしてディレイ、フィルタ、その他のプロセッシング技術を使ってサウンドを変化させる他の方法について見ることができます。

まとめ

tapin~オブジェクトは、絶えずアップデートされているバッファで、常に最も直前に受信したシグナルをストアしています。tapout~オブジェクトに接続されたどのオブジェクトも、tapin~の中にストアされているシグナルを使用することができ、過去(tapin~の記憶の範囲内に限って)のどの時点のシグナルにでもアクセスできます。tapin~とtapout~でディレイされるシグナルは、離散的なエコー、早い反射、コムフィルタ効果を作るために、ディレイされていないシグナルをミキシングすることができます。

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