デジタルオーディオの利点

デジタルオーディオのシンセサイズ

音のデジタル表現は、ちょうど数値のリストの形になるので、理論的にはどんなリストでもサウンドのデジタル表現とみなすことができます。数値のリストが、サウンドとして聞くことのできるものであるためには、数値は可聴域のレート(およそ20〜20,000Hz−訳註)で上下に変動している必要があります。このようなリストであれば、DACに数値を送って電圧に変換し、聞くことができます。このことは、コンピュータサウンド・シンセシスの基礎となります。コンピュータのプログラムでは、どんな数値でも生成することが可能であり、これをサウンドとして聞くことができます。

面白いサウンドを作り出すような数値を生成する多くの方法が発見されてきました。サウンドを作る1つの方法は、2つの変数を持つ方程式を繰り返し解くようなプログラムを書くことです。各繰り返しの中では、1つの変数にだんだんと増加していく値を入力し、時間の経過を表します。方程式の解としてのもう1つの変数の値は、時間軸上でのそれぞれの瞬間の振幅値として使用されます。プログラムの出力は、時間軸上で上下に変動する振幅値になります。

例えば、次のような方程式でnの値を徐々に増加させると、その解の連続によってサイン波が生成されます。

y = Asin(2πfn/R+φ)

この式で、Aは振幅、fは周波数、nはサンプル数(0,1,2,3,_)Rはサンプリングレート、φは位相を表しています。A,f,φに数値を代入し、nの値を増加させながら繰り返し解を求めると、その解yの値(出力サンプル)はサイン波状に変化します。

複合音は、サイン波を加えること(加算シンセシスとして知られている方法)によって生成できます。

y = A1 sin(2πf1n/R+φ1 + A2 sin(2πf2n/R+φ2) + …

これは、1つの代数式でサウンドを生成する方法の例です。当然、他にもより複雑なプログラムが可能です。この加算シンセシス、およびウェーブテーブルシンセシス、周波数変調(FM)、ウェーブシェーピングといったいくつかの方法はMSPチュートリアルで紹介されています。

デジタルシグナルの処理

すべてのデジタル形式のサウンドは、(コンピュータによって合成されたものか、「実世界」のサウンドから量子化されたものかにかかわらず)単なる数値のシリーズです。これらに数値に対するどのような演算でも、オーディオ処理の形になります。

例えば、乗算はオーディオアンプと同じものになります。デジタルシグナルの各々の値を2倍するとシグナルの振幅は2倍(6dBの増加)になります。シグナルの各々の値に0と1の間の値を掛けると、振幅は減少します。

加算はオーディオ・ミキシングと同じものになります。2つ以上のデジタルシグナルを与えると、新しいシグナルは各々のシグナルの1番目の数の和、2番目の数の和、3番目の数の和、…、によって生成されます。

エコーは、以前に発生したサンプルを呼び戻し、現在のサンプルに加算することによって生成されます。例えば、1000サンプル前に出力されたシグナルを現在のサンプルと合わせて再び出力することによって可能になります。

y = xn + Ayn-1000

実際に、シグナルの波形に対するこのような演算によってもたらされる効果は、非常に多く、また多種多様です。これらは、デジタル信号処理(DSP)と呼ばれる電気工学のすべての分野を含んでいます。DSPはデジタルフィルタ(ディレイ、乗算、加算、そして他の数値演算の組合せによって、デジタルシグナルを変化させるための公式)の効果に関係しています。

まとめ

この章では、サウンドという連続する現象をどのように捕らえ、数値のシリーズとして忠実に再現するかについて、また、最終的にビットのストリーム(流れ)としてコンピュータの記憶装置にストア(格納)する方法について述べてきました。サウンドのデジタル表現によってはじめて得ることができる多くの利点があります。:以前よりハイファイなレコーディング、数学的な方法による新しいサウンドのシンセシス、オーディオシグナルへのデジタル信号処理技術の応用、等です。

MSPは、この可能性の領域を探究するためのツールキットを提供します。MSPは、デジタルオーディオのレコーディング、シンセシス、プロセッシングを、MaxのMIDIコントロールとオプジェクト指向プログラミングに統合します。

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