日本語版への序


○1980年頃、私はNECのPC-8001というコンピュータを使い、画面にsin波やcos波の合成結果を表示させて喜んでいました。BASICというプログラミング言語で書かれたそのプログラムの実行速度は遅く、1ドットずつ描かれていく様子を目で追っていくことができました。
1990年頃には、私の周囲ではDECのPDP-11という(当時としても古い)コンピュータでグラフィックスの研究をしている方が多かったのですが、ある日、画像処理で有名なSGI社のコンピュータが導入されました。これは数千万円のもので、個人ではとても買えません。そんなコンピュータでリアルタイムに計算されたアニメーションのデモは、ワイヤーフレームでしたが、その滑らかな動きに感動したことを覚えています。
そして、2002年8月、私は例年開催されているDSP Summer Schoolというワークショップの会場である静岡文化芸術大学にいました。そこでのメインテーマは、Cycling'74社から発売されたばかりのJitterというMaxのライブラリについてのものでした。開発者のJoshua Kit Clayton自らが行う世界初のJitter講義は、私をJitterの購入に導くものとして充分なものでした。Maxという優れたプログラミング環境上で画像処理を行うことができ、その結果の画像は、リアルタイムに計算され、表示され、動くのです。もちろん、1ドットずつ表示されるようなこともありませんし、ワイヤーフレームどころか、きちんとレンダリングされた結果が動くのです。それが中古で買った自分のPowerBookでできてしまうのです。QuickTime MovieやOpenGLも扱えますし、もちろん、MIDIやオーディオの処理ともシームレスに連携できるのです。購入せずにはいられません。
その会場では、以前からMSPのドキュメントを翻訳なさっている齋藤さんにお会いすることができました。私は自分の英語力のなさも忘れ「Jitterドキュメントを一緒に翻訳しませんか」と言うと「ぜひやりましょう」とおっしゃってくださいました。そこからこのプロジェクトは始まりました。現在、β版としての翻訳文が公開されている状況でこの文章を書いているのですが、2003年の2月になっています。翻訳を進めていく途中で、IAMASにJitter日本語サイトがあり、その皆さんが私達とは別に翻訳を進めていることを知りました。そこで、Jitter日本語サイトの皆さんからも訳文を御提供頂き、すべてのJitterチュートリアル日本語訳の公開に至りました。
私の稚拙な英語・日本語能力では、わかりづらい箇所も多いと思います。今後も修正していきたいと思いますので、ご意見・ご指摘等頂ければ幸いです。
また、お忙しい中多くの章の翻訳、HTML化、ウェブサイトの提供をして頂いた齋藤さんには、ただただ感謝するばかりです。翻訳文を快く提供してくださったJitter日本語サイトの皆さんにも深く感謝致します。
このドキュメントが日本のJitterユーザの方々のお役に立つことができれば幸いです。

英検4級のわりには頑張ったと思う杉山貴啓 / sgym@musetech.info


○Max/MSPマニュアル日本語化プロジェクトを始めて早くも3年近くになります。Max/MSP/Jitterという環境に関する日本のサイトも徐々に増えてきているようです。インターネットによって、それぞれの場では小数の人々でも広く協力できる時代になったとつくづく思います。
自分自身、かつてMax、その後MSPに手を染めた頃は、英文マニュアルしか資料がないのでかなり苦しみました。おまけに今のようにインターネットが一般に普及しているといった時代ではなかったのでなおさらです。
英語圏の人であれば、とりあえず言葉の壁もなくこのような面白い世界を学ぶことができます。いっぽうで優れた感性やアイデアを持っている日本人が必ずしも英語に堪能とは限らないでしょう。言葉にとらわれているうちに、肝心な感性やアイデアが曇ってしまっては元も子もありません。言葉の壁が情報や技術、文化の壁となってしまうとしたら本当に残念なことだと思います。そのために少しでもお役に立てたらというのが率直な気持ちです。
短期間で一応の日本語化ができたのも、杉山さん、IAMASのJitter日本語サイトの皆さんのおかげです。

私自身も、これからもさらに深くいろいろ学びたいと思っています。

Hiro.Saito(S.M.L.-管理人)